こどもの歯列矯正治療例
治療例は、患者さんおよび保護者の
同意を得て掲載しています。
8歳8か月の女子
上下の歯並びを広げて、ガタガタを改善した症例

主訴 | 前歯のガタガタが気になる。 |
---|---|
診断名 | 前歯部そう生(ガタガタ)、上下顎狭窄歯列弓(歯列がせまい) |
治療に用いた装置 | クワドヘリックス、バイヘリックス、拡大床(かくだいしょう) |
乳歯の頃はきれいに並んでいたのに永久歯の前歯がガタガタの状態ではえてきたとのことで来院されました。検査したところ、歯が並ぶ土台(歯槽骨)の大きさと歯の大きさのバランスが悪く、さらに上下の歯並びの横幅が狭いことがわかりました。放っておくと将来「抜歯矯正(永久歯を4本抜歯してならべる矯正治療)」しか選択できなくなってしまう状態でした。ご両親とも「できるだけ非抜歯で治療してあげたい。」と強く望まれていました。ガタガタの程度からすると、今のうちに歯並びを広げておけば永久歯がギリギリ並ぶと判断し、歯並びの横幅を広げる治療を行いました。上に「クワドヘリックス」、下に「バイヘリックス」という固定式の装置を装着しました。装置を装着して数日間は、全体的に軽度の痛みを感じましたが、耐えられないほどの強い痛みではなかったそうです。硬いものが咬みにくかったので3日間くらいはうどんなどのやわらかい食べ物を中心に食べていましたが、1週間程度でいつの間にか慣れたそうです。また、最初は舌の使い方が不慣れで舌ったらずなしゃべり方になりましたが、それも1週間程度で慣れたとのことです。月に1回のペースで受診しながら装置の調整を繰り返しました。治療開始から半年経過時、装置周囲の歯ぐきが腫れてしまったのでいったん装置を除去し、「拡大床」という取り外し可能な装置に切り替え、さらに拡大を継続しました。トータル1年3か月間拡大し、歯列は上下とも6ミリ程度拡大しました。前歯のガタガタは自然に解消し、残りの永久歯がはえるスペースも確保できました。歯列が安定したため、現在は上下の装置を撤去して歯の交換を経過観察しています。あと2~3年は経過観察し、12歳頃から必要に応じて大人の矯正治療(マルチブラケット治療)で仕上げる予定です。抜歯矯正の可能性はかなり低くなりました。
- 当院はできる限り「非抜歯」の治療を心がけており抜歯治療は最終手段と考えていますが、状況により抜歯矯正になることがあります。治療後の状態を予測し、どうしても抜歯が必要な場合は抜歯治療のメリット・デメリットをご説明いたします。最終的にはご本人やご両親のご希望を加味した上で判断いたします。
矯正に伴うリスクについて見る
- 矯正に伴うリスクについて
- 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1、2 週間で慣れることが多いです。
歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。
装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重 要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まります ので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと 隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。
歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がること があります。
ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
矯正装置を誤飲する可能性があります。
装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する 可能性があります。
装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物) などをやりなおす可能性があります。
あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えてい る骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になる ことがあります。
矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。